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シンプルなルールでどう感情を揺さぶるか。
取材・文:大高(すごろくや)
公開日:2025年11月14日
「どうして、このゲームをつくったんですか?」は、ボードゲーム作家の方々がどのように考え、形にしていったのかを聞くインタビューシリーズです。第二弾では、自主製作を経て、すごろくやの「MAMÉ WASABI (マメワサビ)」ブランドからリリースされた『ピーズ(PEAS)』について、作者のyokomeさんに伺いました。
PROFILE
1996年生まれ。宮城県石巻市出身。
2018年ごろにボードゲームの世界に魅了されて以来、現在までボードゲームに携わる仕事を続けている。最近の楽しみは、『ストリートファイター6』のプロリーグ配信を見ること。
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同時進行で進めるトリックテイキング。
- 『ピーズ』は2人専用のトリックテイキングということですが‥‥。
- yokome
- あまり多くはないと思います。
- そうですよね。はじめから2人用にしようと思ってつくられたんでしょうか?
- yokome
- はい。もともと2人用のボードゲームが好きなのと、ゲームのなかでもトリックテイキングが好きなので、2人専用のトリックテイキングで駆け引きができるようなものをって、考えたんじゃなかったかな‥‥。
▲得点になる「お豆(プラス)」や「虫くん(マイナス)」のカード越しに、数字カードを出していく
- yokome
- 同時進行でいくつかのトリックが多発しているトリックテイキング、例えば『バトルライン』のように各列でトリックをしていくようなものができないかなぁと。そういうゲームがあるのかなと思って調べてみたら、4人用とかはあったんですよ。なので、2人専用で点数を取り合うようなトリックテイキングができたら、ちょっと変わったおもしろさになるんじゃないかと思って、つくりました。
- なるほど、「同時進行」がキーになったんですね。そして『ピーズ』では、トリックごとに勝負するのではなく、手札を全部出し終わったあとに、それぞれのトリックの勝敗を見ていくというルールになった、と。
- yokome
- 1個ずつトリックを取っていくのはわかりやすくていいんですけど、そうではなくて、すべてのトリックを紐づいて考えられる、かつ、その場所に縛りを入れられるようなものにしたかったんですよね。
- やってみて、すごく忙しいと思いました。
- yokome
- ああ、本当ですか、忙しかったですか。
- 考えることが多くて。ひとつのトリックばかり見ていてもダメで、全体を見ながらやらないといけない。
▲手札を出し終えたら、お豆カードの先頭となる「へた」側からトリックの勝敗を見ていく
- yokome
- まさに、それがゲームのコンセプトです(笑)。
- ですよね(笑)。あと、たくさんトリックを取ったほうがいいのかと思っていたら、「全勝したら負け」というルールがあって、それもおもしろいなぁと思いました。
- yokome
- トリックテイキングが好きな人からすると、『ピーズ』はけっこう勝ちやすいゲームなんですよ。トリックテイキングって、どれだけ大きな数字を持っていても、色を枯らしただけで負けたりするんですよね。それが容易にできるシステムなので、その救済として、「全勝したら負け」というルールをつくりました。
- それによって、「どこに負けをつくるか」を考えなくてはいけなくなりますね。
- yokome
- そうなんです。そして、その負けに引っ張られないように、勝ちどころもちゃんとつくらないといけないという駆け引きが生まれました。けっこう、我慢比べなんですよね。いつかは、勝敗の鍵となる重要なところに手札を出さざるを得なくなるので。
- 我慢比べ、たしかに! そういったルール上のイメージは最初からあったんでしょうか?
- yokome
- それはテストプレイしてみて、細かいところを調整していった感じですね。マイナスの点数があったほうがいいとか、全勝しやすいルールだから救済をつくろうとか。でも、「同時進行のトリックテイキング」という大元のルールができてからは、あとは微調整したらできた感じだったので、すごい苦労したっていうことはなかったですね。
- 大元が決まれば、順調に進んだんですね。『ピーズ』は、yokomeさんがはじめてつくったボードゲームですよね?
- yokome
- 個人の名義では、はじめてつくったゲームですね。
- あ、それ以前につくられていたんですか。同人サークルに入っていたとか?
- yokome
- いえ、ボードゲームカフェの店員をやっていた時期があるのですが、そのカフェのオーナーがグラフィックデザイナーで、一緒にゲームをつくってみようかという話になって。ゲームのシステムを考えてみたいとも思っていたので、僕がシステムを、オーナーがイラストやデザインを担当して、2タイトルつくりました。
- へぇー、ゲームシステムに興味があったんですね。
- yokome
- 「ルールでどういう駆け引きが生まれるのか」ということを考えるのは、当時から好きだったのかもしれません。
- そのときにつくった2タイトルは、どんなゲームだったんでしょう?
- yokome
- 簡単にいうと、1個は神経衰弱みたいなメモリーゲームで、もう1個は推理系の心理戦のゲームです。
- それから、個人名義で『ピーズ』をつくられて、ゲームマーケットで販売された。
- yokome
- そうです、個人では2023年春のゲームマーケットに発売して、翌年の2024年には、すごろくやの「MAMÉ WASABI(マメワサビ)」ブランドからリリースされました。お声がけいただいて、すごくうれしかったです。
▲yokomeさんがつくったトリックテイキングたち
- yokomeさんの名義では、『ピーズ』を含めて、今まで4個のトリックテイキングのゲームをつくられていますよね。
- yokome
- はい。すべてゲームマーケットに合わせてつくっていて、次の2025年秋のゲームマーケットで5個目を出します。それも、2人専用のトリックテイキングゲームです。
- 新作も。
- yokome
- こだわっているわけではないのですが、トリックテイキングが好きでよく考えているから、アイディアが浮かびやすいというのはあると思います。
- あの、トリックテイキングの魅力ってどこにあると思いますか?
- yokome
- うーん、そうですね‥‥。トリックテイキングと聞くと、色の縛りがあるとか、ちょっと複雑なイメージがあるかもしれないんですが、僕はそんなに難しくないと思っているんですね。単純な手続きのなかで、いろんな駆け引きができるのがおもしろいと思います。あと、「ビッド」といって、トリックの勝敗ではなく、手札を見て、自分が何勝できるかを予想するというルールがあるんですね。そういう、トリックを取るだけじゃない遊び方があるのも、おもしろいと思います。
- たしかに、手順はシンプルだけど、ルールで深みを出していますよね。
- yokome
- あと、渋さも好きです。
- 渋さ?
- yokome
- トランプは、もともとトリックテイキングをするために生まれたといわれているので、そういう渋さも好きです。
- 何百年も前から、今もずっと遊ばれていると考えると、たしかに渋い。
- yokome
- あと、つくりやすいのも魅力のひとつだと思います。トリックテイキングは得点の方式を変えるのか、トリックの動きを変えるのか、みたいに少し変化をつければ、一応ゲームにはなるんですよ。
- それこそ、ベースがちゃんとしていますもんね。
- yokome
- そうです、ベースがすでにおもしろい。なので、飛び抜けておもしろいものになっているのかというのが、つくるときの課題になりますね。
- たしかに、その部分はなかなかシビアかもしれません。
- yokome
- やっぱりトリックテイキングは好きだから、おもしろいものをつくり続けたいと思っています。とはいえ、それ以外のボードゲームも、思いついたらつくってみたいですね。