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きかせてください、ゲームのこと
連載:どうして、このゲームをつくったんですか?
森川幸人さん

ちょっとの協力と、 すこしの意地悪。

取材・文:大高(すごろくや)
公開日:2026年1月23日
ちょっとの協力と、 すこしの意地悪。

「どうして、このゲームをつくったんですか?」は、ボードゲーム作家の方々がどのように考え、形にしていったのかを聞くインタビューシリーズです。シリーズ第四弾に登場するのは、ゲームシステムにAIを取り入れた『がんばれ森川君2号』や『アストロノーカ』などのコンピューターゲームをつくった森川幸人さん。約30年前に発売され、2023年にリメイクされた『ハーベスト』について伺いました。

PROFILE
森川幸人
森川幸人(もりかわ ゆきひと)
x.com/morikawa1go

1959年生まれ。CGクリエイターとして『アインシュタイン』『ウゴウゴ・ルーガ』等のテレビ番組に携わったあと、1995年に有限会社ムームーを設立してゲーム制作の道へ進む。AIとゲームシステムが融合したタイトルを多数手がけており、代表作に『がんばれ森川君2号』『アストロノーカ』等がある。2017年にモリカトロン株式会社を設立し、現在はエンターテイメントへのAI導入を支援している。

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INDEX
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お土産ものだった『ハーベスト』。
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お土産ものだった『ハーベスト』。

  1. 今回、森川さんには『ハーベスト』をつくられたときのことを伺いたいのですが、現在販売されているものはリメイク版ですよね。
森川さん
そうです。
  1. 事前にオリジナル版のことを調べたのですが、はっきりとわからず‥‥。オリジナル版の発売が「1990年代」という表記は見つけたのですが。
森川さん
まだインターネットが普及する前のことですからねぇ。きちっと記録をとっていないので正確な発売時期はわかりませんが、そのくらいのころでしょうね。
  1. リメイク版を発売された ForGames のページでは「駅だけで買えた伝説のゲームが今、よみがえる!」と謳われていますが、そうだったんですか?
森川さん
そうそう、当時JR東海が新幹線の中でボードゲームを売るプロジェクトをやるっていうので、石原さんから声をかけていただいたんです。
  1. 石原さんって、現在、株式会社ポケモン代表取締役社長・CEOの石原恒和さんですか?
森川さん
そうです。石原さんは大学時代の2つ上の先輩でよく遊んでいたし、仕事でも関わらせてもらってて。当時は、夜な夜な石原さんまわりのメンバーとボードゲームで遊んでいたんで、その流れで「こんなプロジェクトがあるんだけど、つくらない?」っていう話になったんだと思います。
  1. 1990年代というと、森川さんは『ウゴウゴルーガ ()』をつくられていたころでしょうか?

※ウゴウゴルーガ⋯当時は最先端の技術だった3DCGを駆使した子供向け番組で、社会現象にもなった。

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森川さん
そうだと思いますが、同時並行していたかどうか‥‥。そのあたりの記憶が曖昧で。ただ、そのころは『ウゴウゴルーガ』の制作メンバーで「株式会社ウルトラ」という会社をつくっていて、そのメンバーと『ハーベスト』のテストプレイをたくさんしたのは覚えています。
  1. 森川さんがボードゲームをつくったのは、『ハーベスト』がはじめてですか?
森川さん
そうです。
  1. どういうところから発想していったか、覚えてらっしゃいますか?
森川さん
いやぁ、どこでどうなって、あのアイディアにたどり着いたのか‥‥。ただ、とにかく覚えているのは、名刺サイズの白い紙があるんですが、あれに絵を描いてはテストプレイを繰り返したんですよねぇ。『ミカンせいじん』をつくった白佐木和馬だとか、漫画家の青木俊直だとか、そのあたりのメンバーと、ああでもない、こうでもない、といいながらつくりました。なので、全部自分のアイディアというわけではないですね。
  1. 中心に森川さんのアイディアがありつつ、ウルトラのみなさんで形にしていったんですかね。
森川さん
僕のアイディアがあったのかどうかすら‥‥()。とっかかりを覚えていないので、最初からワイワイとやり出して、なんとなく今のルールにまとまったのかもしれません。
  1. カードゲームにしたのは、森川さんがお好きだからとか?
森川さん
いや、新幹線の車内販売のワゴンでも売っていたので、大きなボードを使うゲームだとカートに乗せられないから、コンパクトなカードゲームにしたんだと思います。
  1. なるほど、売り場の面積の都合で。結果的に、カードゲームなら新幹線の中でも遊びやすいですし、ぴったりでしたね。それにしても、JR東海がボードゲームを制作するって、ちょっと意外というか。
森川さん
ボードゲームに限らず、あのころはおもちゃとかいろいろ売ってたんですよね。出張帰りのお父さんが子どもへのお土産に買う、というような需要があったみたいです。ちびまるこちゃんのトランプとか、ボードゲームもいくつかつくっていて、そのうちのひとつが『ハーベスト』でした。
  1. そういう時代だったんですね。販売場所が限られていたこともあり、『ハーベスト』は長らく入手困難とされていましたが、2023年に ForGames からリメイクされました。そのときのことを聞かせていただきたいのですが、‥‥実物を見ながらお話しましょうか。
森川さん
はいはい。
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  1. どのような経緯でリメイクすることになったのでしょう?
森川さん
ForGames の方が、『ハーベスト』をすごく気に入ってくれていたんですよ。若い人たちなのに、よくこのゲームのこと知ってたなぁと。で、リメイクしたいとお声がけいただきました。たくさんの方に遊んでもらいたいという気持ちは当然あったので、こうしてリメイクしてもらえて、ありがたいですよね。
  1. モリカトロン(森川さんの会社)のインタビュー記事を読みましたが、ForGames の郡山さんの私物であるオリジナル版『ハーベスト』の箱の中に、当時の切符が入ってたというのが、とてもすてきでした。
森川さん
今でも大切にしてくれていて、ありがたいですよね。
  1. 『ハーベスト』は畑を舞台に、陣取りと点取りをしていくゲームですが、そういうゲームにしようと思われたときのことを、なにか覚えてらっしゃいますか?
▲同じ野菜を横・縦・斜めに3つ以上並べられたら、その野菜が植えられている畑の持ち主が「収穫」して得点をゲット。自分の畑だけでは3つ並べることができないため、ほかの人の畑にも野菜を置かなければならない
▲同じ野菜を横・縦・斜めに3つ以上並べられたら、その野菜が植えられている畑の持ち主が「収穫」して得点をゲット。自分の畑だけでは3つ並べることができないため、ほかの人の畑にも野菜を置かなければならない
森川さん
あのー、昔『SHARK』というゲームがあって、陣取り合戦みたいな形で会社をつくっていって、株を売ったり買ったりしてお金を儲けていくというルールがおもしろかったんです。そういう、ストラテジックなものをつくりたいと思っちゃったんですよねぇ。で、株じゃあれなんで、野菜を育てようと。
  1. たしかに、野菜を畑に植えて収穫するほうが親近感があります。絵柄も、リメイク版でかなり変わりましたね。
森川さん
オリジナル版は、全部自分が描いてます。
  1. あ、そうなんですか! ネット上の画像でしか拝見できていませんが、おしゃれな絵柄だなと思っていました。
森川さん
イラストについては、ForGames がカジュアルにしたいということで、「どうぞ」と。ルールも時代に合わせてアレンジしたいといわれて、変更したところがありますね。
  1. 1人用のルールが追加されたり。
森川さん
今はボードゲームを1人で遊ぶ人もけっこういるみたいで。そういうところは、もう ForGames のおふたりに任せました。
  1. 大きな変更はそれくらいですか?
森川さん
そうですね。細かいところだと、リメイク版では人数によって畑ボードの位置が決まっていますが、オリジナル版は自由に置けたんですよ。例えば、誰の畑ともくっつけずに、完全に孤立させてもよかった。
▲こんなふうに、オリジナル版では重なる部分が少なくなるように畑を配置してもOKだった
▲こんなふうに、オリジナル版では重なる部分が少なくなるように畑を配置してもOKだった
  1. そうしたら、誰にも邪魔されなくなりますね。‥‥でも、収穫もできなくなる?
森川さん
自分の畑だけじゃ収穫できませんからね。なので、ナッシュ均衡ですよね。ある程度協調性をもたないと勝てない。
  1. 「畑ボードはどこに置いてもいい」というルールは、リメイク版の『ハーベスト』の説明書にはありませんが、上級者向けのルールとして遊んでもらってもいいですね。
森川さん
はい。畑ボードは順番に置いていくので、「お前の畑とはくっつけたくない」みたいなこともできますよね。
  1. 「マイナス点のカードばかり押し付けてきて意地悪されたから、意地悪し返してやろう!」みたいな。
森川さん
そうそう。
  1. そういった、すこし意地悪の要素が入っているのは、森川さんの好みですか?
森川さん
そうですね。最近は協力するだけのゲームってあるでしょう? ひとつの目標に向かってみんなで課題をクリアするような。あれはね、自分にとっては衝撃でした。「え、邪魔しないの?」って。
  1. 邪魔ができないという衝撃()
森川さん
「邪魔できないんだ、急がないんだ」って思っちゃう。でも、邪魔ばかりするゲームも、それはそれで殺伐としちゃうんで、あるところまでは協力する。でも、相手よりちょっと自分が勝つように、自分のほうがメリットが多いようにする。これは『モノポリー』の「交渉」と同じ考え方ですね。自分だけが得する「交渉」は成立しないんです。
  1. 『ハーベスト』の説明書に、「ここにトマトを置いてほしい」などと積極的に発言するといい、というヒントが書かれていて、おもしろいなと思いました。しゃべっちゃダメというルールのゲームもありますが、『ハーベスト』はむしろしゃべったほうがおもしろくなるゲームなんだと。
森川さん
そういっておいて、裏切ることもできますしね。
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