みんなのいい!が支え合う、すごろくやのオンラインストア
きかせてください、ゲームのこと
連載:どうして、このゲームをつくったんですか?
HEY! ウナム日月さん

誰でも遊べて、奥が深いものを

取材・文:大高(すごろくや)
公開日:2026年8月19日
誰でも遊べて、奥が深いものを

「どうして、このゲームをつくったんですか?」は、ボードゲーム作家の方々がどのように考え、形にしていったのかを聞くインタビューシリーズです。シリーズ第7弾では、2025年「すごろくやゲーム大賞」最終候補作『マッチ売りの大富豪』のゲームデザイナー・ウナム日月さんにお話を伺いました。

PROFILE
ウナム日月
HEY!
ウナム日月(うなむ ひづき)
x.com/unamuhiduki

1982年生まれ。兵庫県宝塚市出身。フリーランス。
立命館大学 映画部というサークルで自主制作映画を10本監督。ブログ運営・実写映画の制作・アニメ制作進行、漫画原作など、さまざまな創作に挑戦する。
2023年にボードゲーム制作メンバー募集をきっかけにHEY!結成に参加。現在に至る。
代表作は『魔王様のお引越し』『国旗王<こっきんぐ> 日本とドイツ どっちが広い?』『マッチ売りの大富豪』。

RELATED ITEM
INDEX
1
大富豪のおもしろさ
1

大富豪のおもしろさ

  1. 今回お話を伺う『マッチ売りの大富豪』は、2025年「すごろくやゲーム大賞」の最終候補に選ばせていただきました。その節は、ありがとうございました。
ウナム
こちらこそ、ありがとうございました。
  1. そのご縁から、このインタビューにつながったわけですが、事前にウナムさんのことをお調べしたとき、所属されているチーム「HEY!」がとてもおもしろいなと思って。
ウナム
そうですか。
  1. HEY! はボードゲーム制作チームということですが、改めて、どのようにチームメンバーが集まったのかお話いただけますか。
ウナム
もともと、「sangenya」というチームで活動していた代表のかどたとしが、 X(旧Twitter)で新たなチームメンバーの募集を呼びかけたんですよ。そしたら、僕も含めて10人くらい集まりました。
  1. ウナムさんは、HEY! ではじめてゲームデザインをされたそうですが、手を挙げたときは未経験だったんですよね?
ウナム
はい。子どものころに自作のすごろくとかつくったりしましたけど、ゲームデザインはほとんどしたことがありませんでした。というか、手を挙げたほとんどの人が、僕のように制作未経験者だったんですよ。かどたと、もう一人・池本七音だけがゲーム制作をしたことがあって、ほかの人はみんなはじめてで。
  1. ボードゲームはもともとお好きだったんですか?
ウナム
いや、ボードゲームもそんなに詳しくなくて。はじめて近代ボードゲームに接触したのも、2007年ごろにXbox Live(現・Xbox ネットワーク)で周年記念に無料で配信された『カルカソンヌ』のオンライン版がきっかけだったんですよ。最初はルールもろくにわからないままやってましたね。お城がモリモリモリって現れたり、音楽が流れてきたりする演出がけっこうよくて、やっているうちにだんだんルールも理解できてきて。元はボードゲームだと知って、それからボードゲームでも遊ぶようになりました。
  1. それから、ゲームをつくりたいと思うようになったんですか?
Image slot-1
ウナム
うーん、ゲームに関わらず、クリエイティブなことをしたいという気持ちがずっとありました。僕はもともと映像系の仕事をしていて、制作という立場で実写もアニメも携わりましたが、自分には向いていなかったんです。監督をやってみたいという気持ちもありましたが、そういう下っ端の仕事をちゃんとこなさないとできないから、なかなか難しくて。僕は映像も好きなんですけど、どちらかというと、コンピュータゲームのほうが好きなんですよ。とくに任天堂が大好きで、任天堂のハードはもちろん、PlayStation、セガサターン、ドリームキャスト、Xboxなどなど、けっこう網羅しているんですよ。バーチャルボーイも持ってましたし。
  1. マニアックですね。
ウナム
映像より、コンピュータゲームのほうがマニアだと思います。そっちの道も考えないわけではなかったんですが、結局映像のほうへ進みました。なにかつくってみたいけど、映像もコンピュータゲームも、制作の経験から自分には向いていないんだろうなと感じていました。でも、あるとき「ボードゲームならつくれるんとちゃうか」と思ったんですよね。少人数でつくれるし、意思決定もしやすいですから。
  1. 映像やコンピュータゲームに比べると、ミニマムに制作できますよね。
ウナム
あと、かどたは募集当時、すでに『富士山地下99階』というゲームをつくって、1200個売ったという実績がありました。なので、この人がいるなら自分が考えたゲームも完成までもっていけるだろう、きっとなんとかなるだろうと思えたのも大きかったですね。
  1. そうして、HEY! に加入されたと。現在、ウナムさんはHEY! の広報も担当してらっしゃいますよね。
ウナム
はい。
  1. HEY! では、新作を販売するときに動画もちゃんと制作されているのが、すごいなぁと思います。ゲームを完成させることに集中しちゃって、動画は大事だと思いつつ、そこまで手が回らないことも少なくないので‥‥。
ウナム
僕は「説明書を読めばできる」とは、とてもじゃないけど思えなくて。なので、これを見れば遊ぶことはできる、くらいの動画は必須だと思っています。『国旗王(こっきんぐ)』以降、発売するゲームには動画をつくるようにしています。



  1. 『マッチ売りの大富豪』の動画もとてもわかりやすくて、これを見ればすぐに遊べそうです。こういった映像のディレクションも、ウナムさんがされているんですか?
ウナム
そうですね、軽くコンテを描いて発注してます。イメージは、任天堂の『世界のアソビ大全51』なんですよ。『世界のアソビ大全51』には51種のゲームが収録されているんですが、ゲームを選択すると、遊ぶ前に人形劇みたいなのがはじまって、遊び方がわかるようになっているんですね。任天堂なんで、ゲームやプレーの紹介として、とても丁寧に練られてるんですよ。
  1. さすが、任天堂。
ウナム
参考にさせてもらってます。
Image slot-2
  1. 『マッチ売りの大富豪』は、大富豪をベースに、マッチ棒を使用することで数字を書き換えられるのが最大の特徴ですが、どのようにして着想を得たのでしょうか。
ウナム
大新さん(倦怠期・新澤大樹さん)がつくった『セブンセグメントトリックス』というゲームがヒントになりました。はじめに5本ずつ棒を持っている状態からはじまって、棒を使って数字を変えつつトリックテイキングをしていくんですが、最終的に手元に残った棒の数とトリックテイキングの勝利数が同じでないといけないんです。棒が3本残っていたら、トリックテイキングに3勝していなければ、得点が入りません。
セブンセグメントが使われているゲームの例。『Twinkle Starship』は、双子のライオン堂が出した『セブンセグメントトリックス』のリメイク版
セブンセグメントが使われているゲームの例。『Twinkle Starship』は、双子のライオン堂が出した『セブンセグメントトリックス』のリメイク版
  1. 棒の数と勝利数を同じに‥‥。
ウナム
最後、帳尻を合わせるために使わないといけなくなることもありますね。『セブンセグメントトリックス』で遊んでて、なんとなく「このまま大富豪に応用できるんちゃうかな」って思ったんですよね。
  1. それは、もともと大富豪系のゲームをつくりたいという構想があったんでしょうか。
ウナム
いや、自然とアイディアが浮かびました。小学校、中学校でかなり遊んでて、「大富豪はおもしろい」という感覚はずっとありました。僕が、トリックテイキングはあんまり好きじゃないというのもあるんですけど。
  1. わたしも中学、高校でかなり遊びました。大富豪のおもしろさって、なんなんでしょうね。
ウナム
『マッチ売りの大富豪』をつくってわかったんですけど、大富豪はローカルルールを省いた、シンプルなルールで遊ぶのがいちばんおもしろいんですよ。「階段」「8切り」「都落ち」などのルールを採用すると、例外処理が増えてややこしくなるわりに、おもしろさが増えているかというと、実はそうでもない。
  1. ほぉ。
ウナム
前の手番の人と同じ枚数で、それより強い数の組み合わせを出すことと「革命」。これだけで、大富豪は完成されているんです。これでも『マッチ売りの大富豪』のルールの量は多かったなと思うこともありますね。
  1. そうなんですか。
ウナム
もうちょっと減らせるかな、と。去年、エッセン(※)に参加したときに、ヨーロッパの人は大富豪で遊び慣れていないので、ルール説明で苦戦したんですよ。日本人は大富豪で遊び慣れているから、だいぶ話が早い。ルールの説明も半分くらい省けます。

※エッセン(Essen)…ドイツで開催される世界最大級のボードゲーム見本市「Spiel Essen」の通称。

  1. たしかに、遊び慣れていないと、まずは大富豪を理解するところからですね。
ウナム
あっちでは大富豪は『President』とかって呼ばれるですけど、あんまり通じないですね。「ライクティチュー」「ライクスカウト」っていったほうが、わかってくれました。むしろ、中国や韓国のほうが通りがよくて、中国では「闘地主(ドウディージュー)」、韓国では「グレートダルムチ」というゲームが大富豪に似ていて、よく遊ばれているらしいですね。
  1. アジアはカードゲームが人気だと聞くので、『マッチ売りの大富豪』はアジアと相性がよいかもしれませんね。
『マッチ売りの大富豪』では、「1」の3枚出し、「4」の3枚出しという流れで手番がきたとき、手札に「8」が3枚なくても、マッチ棒を使って数字を変え、「8」を3枚にすればよい。マッチ棒パズル的思考と大富豪の駆け引きを同時にたのしめるゲーム
『マッチ売りの大富豪』では、「1」の3枚出し、「4」の3枚出しという流れで手番がきたとき、手札に「8」が3枚なくても、マッチ棒を使って数字を変え、「8」を3枚にすればよい。マッチ棒パズル的思考と大富豪の駆け引きを同時にたのしめるゲーム

関連タグワード

記事の一覧
読み込み中...