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任天堂のように
- 通常の大富豪では、カードの強さは「3,4,5,6,7,8,9,10,J,Q,K,1,2」という順になりますが、『マッチ売りの大富豪』では、「0〜9」と「A〜F」までという16進数が採用されているのはどういう発想からなんでしょうか。
- ウナム
- 「0〜9」までの数字だけだと、変化のパターンが足りないように感じられたからなんです。最初は、通常の大富豪と同じ強さ順にしていたんですが、絵札の「J」「Q」「K」って、それらに変えられる数字があんまりなくて。「Q」「K」については、セブンセグメントの枠を無視する形になりますし。
- ウナム
- もっと変化をつけるために、同じアルファベットなら16進数にしたらいいんじゃないかと思って、ためしに「A〜F」でやってみたらすごくうまくいって。まぁ、「b」と「d」は小文字にしているので、ちょっと苦しいんですけど。
- 小文字にすることで、すべての数字とアルファベットがきれいに枠内で表現できるので、遊ぶ側としては、やりやすいと思います。
- ウナム
- ただ、変化のパターンが増えた分、すべてがわかっていないと戦略が立てられないと思っていたので、試作品ではカードの端に変化パターンのサマリーをつけていたんですよ。
- ああ、両端についていますね。
- ウナム
- ずらして持てば、変化可能な数字とアルファベットが横一列になるようにしていました。
- 戦略を考えるうえで便利ですね。どうしてデザインからなくしたんですか?
- ウナム
- 実力者が集まる名古屋のテストプレー会に、この試作品を持っていったら、「端のサマリーはいらん」といわれたんです。そのとき、自分で変化パターンを考えることがマッチ棒パズルを解くような快感があるといわれて、目からウロコでした。
- ああー。状況が一変するような変化を自分で見つけたときには、「ひらめいた!」という爽快感がありますね。
- ウナム
- 「F」はマッチ棒を1本足したら「E」になることはすぐにわかるけど、上下逆にしたら「d」にもなる、みたいな発見が気持ちいいらしくて。そして、それがゲームの入口として機能している。これは、完全にうれしい誤算でした。あと、アートワークを担当したイワムラからも、このサマリーはデザインとしてよくない、カード内の情報量が多くてデザインしにくいっていわれていたんですよ。
- テストプレー会でも、デザイン面でも、いらないといわれたんですね。
- ウナム
- そうなんです。なので、サマリーは省いて情報をすっきりさせました。
- 『マッチ売りの大富豪』というタイトルも、ぴったりだと思いました。
- ウナム
- 僕は「名は体を表す」ほうがいいと思っているんです。『カルカソンヌ』って、日本人が聞いてもハテナじゃないですか。ヨーロッパの人だとフランスの地名だってわかって、地形に関わるゲームなのかなって想像できるかもしれませんが。
- カルカソンヌって、フランスの地名なんですね‥‥!
- ウナム
- 僕がつくったゲームでいえば、『魔王様のお引越し』というゲームは、家の中の物の長さを予想して足していって、基準となるひもの長さを超えたかどうかを当てるというものなんですが、まぁ、長さを測るんですよね。長さを測るといったら運送業、じゃあテーマは引っ越しかな、みたいな。『魔王様のお引越し』というタイトルは悪くないと思ってるんですけど、ゲーム内容までは想像できないんですよ。
- たしかに、フックとしては強いですが、タイトルだけでは「なにをするのか」はわかりにくいですね。
- ウナム
- 『マッチ売りの大富豪』も、棒を使って数字を変えていくものってマッチ棒パズルくらいしか思い浮かばなかったし、マッチといえば『マッチ売りの少女』くらいしかないなって。
- 結果的に、タイトルもデザインも、ゲーム内容とぴったりになったと。
- ウナム
- なんか、いろいろ偶然よくなりました。マッチ棒パズルの要素とかは、僕らのほうでは気づけていなかった要素でしたし。
- そういえば、『魔王様のお引越し』と『マッチ売りの大富豪』は箱のサイズが同じなんですね。
- ウナム
- そうなんです。これ、スーパーファミコンのソフトと同じ箱のサイズなんですよ。『国旗王』も箱のサイズは同じなんですけど、カード数が多くてちょっと収まりきらなかったので、厚みが違うんですけども。
- あー、なるほど。だからか、サイズ感として親しみがあったのは!
- ウナム
- スーファミ箱シリーズみたいな形で、HEY! のゲームシリーズにしたかったんですけど、最近はうやむやになってきていますね。イワムラは「縦長でデザインしにくい」って、よくいってます。
- タイトルやデザインからも、ウナムさんが大切にされていることが垣間見えますが、ゲームをつくるうえで外せないことというか、気をつけていることってありますか?
- ウナム
- うーん‥‥、できるだけルールを減らすことですかね。
- ルールを減らす。
- ウナム
- まず、僕がルールを覚えるのがあんまり好きじゃないんですよ。それが、副次的に誰でも遊べるものになるっていう利点を生んでいますね。やっぱり、ルールを覚えるのって遊ぶ人に負荷をかけるじゃないですか。ルールを覚えている時間はたのしくないし。ゲームとしてのおもしろさがちょっと減るとしても、ルールは削ったほうがいいとすら思っています。
- おもしろさが減るとしても、ですか。
- ウナム
- できるだけそれは避けるように努力しますが、結果的に例外処理が増えるくらいなら、もうそのルールはなしでいいやってなりますね。遊んでいる人がそっちのほうがおもしろいと思うなら、ハウスルールとしてやってもらったらいいと思っています。
- 基本だけの遊び方はシンプルにしておいて、遊ぶ人がハウスルールを追加していけばよいと。
- ウナム
- そうですね。基本の遊び方だけは間違ってほしくないので、動画などでケアはします。‥‥あとは、アナログゲームっぽさを考えるようにしていますね。
- アナログっぽさ。
- ウナム
- ゲームデザイナーの間でよく話されていることなんですが、ボードゲームを高度化すればするほど、デジタルっぽくなってしまうんですよね。本来の意味では、デジタルは「1、2、3と数えられるもの」、アナログは「変化する量」を示すものです。だから、ボードゲームで「木材2個」「お金5枚」と管理するのは、本来の意味ではデジタルな情報なんです。
- 資材を管理するようなゲームは、デジタル感が強まるということ?
- ウナム
- 程度にもよりますが、そうですね。『魔王様のお引っ越し』は、実際にその場にある物を測ることでアナログ感を出したんですが、あまり売れませんでした。やっぱり、リアルな空間をゲームに利用するとなると、制限がかかるというか、遊ぶ場所でおもしろさが変動するんですよね。自宅や学校ならある程度たのしく遊べても、公民館やBAR で遊んでもあまりたのしくないかもしれない。
- ウナム
- 僕は、ゲームの理想形は任天堂だと思っているので、任天堂がやっているようなことをボードゲームで表現したいと思っています。年齢とか性別とか関係なく誰でも遊べて、奥が深い。初心者もたのしいし、マニアも唸るっていうのが理想です。
- シンプルなルールのなかに、奥深さを出すにはどういう工夫をされているんでしょう?
- ウナム
- 『マッチ売りの大富豪』でいうと、奥深さを出すために、手札の出し方を『スカウト』のように「複数枚出せて、枚数が多いほうが強い」とか「複数枚出すときは同値か連番」のようなルールを入れてもよかったのですが、なんか、あんまりよくないなと思ったんですよ。大富豪って、手札から2枚出し、3枚出しができる強い役をもっていても、あえて1枚出しをして崩しにいかないといけない場面がある。そういうところが、おもしろさのひとつだと思うんですね。なので、「枚数が多いほうが強い」とか「階段」とかができちゃうと、1枚出しの醍醐味が失われてしまう。
- たしかに。
- ウナム
- 長考にもつながってしまうし、なんというか、場をコントロールするたのしみも減ってしまうんです。もし、『スカウト』のようなルールを採用していたら、自分が親のときに1枚出しして、手番が1周して戻ってきたときには、全然違う枚数になっていたり、「階段」になっていたりする。それって、自分の打った手が報われなさすぎじゃないかなって思うんです。
- 大富豪は親が出した枚数に準じていくので、親になれれば、ある程度、場をコントロールできますし、それが戦略につながりますね。
- ウナム
- そこが大富豪のおもしろさの肝なので、やっぱりそこは守らないといけないと思います。『スカウト』は手札を育てるゲームなので、先ほどのルールがあるのはおもしろさにつながっているんですが、それを単純に『大富豪』にもってきても、よくない。
- 大富豪のおもしろさは、そこじゃない。
- ウナム
- そうです。自分が打った手が報われなさすぎてもダメですが、報われすぎてもダメで‥‥。「これでアガリやろ!」って思っていた強い手が、思いもよらない手によって返されるとか、そういう意外性も大富豪にはちゃんとあるんですよ。運と実力のバランスがちょうどいいんです。
- そういった大富豪のそのままのおもしろさを守りつつ、それに加えて思いがけずマッチ棒パズルが奥深さのひとつになったんですね。
- ウナム
- はい、完全にたまたまなんですが。初回プレーでは頭がパニックになったという人でも、2回め以降はちゃんと戦略を練ってたのしんでもらえる、いい塩梅の難易度になりました。
- 今後のウナムさんの新作もたのしみにしています。本日はありがとうございました。
- ウナム
- ありがとうございました。

