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『キャピタルホース』の種。
- 倦怠期として2人でそれぞれ1〜2タイトルつくったあと、のこりは1人で30タイトルほどつくっているとおっしゃっていましたが‥‥。
- 新澤
- はい。そのうち20個くらいはトリックテイキングです。
- そうですよね。新澤さんのことを調べると、トリックテイキングを主につくられている方だと紹介されていることが多くて。でも、今回お話を伺う『キャピタルホース』は、そうではないですよね。
- 新澤
- はい。
- 簡単にいうと、都道府県を馬に見立てて、競馬のように予想するゲームですが、予想する内容が、例えば「すするもう1杯 ラーメンの消費額が高い順を当てよう!」といった都道府県別のランキングになっていますよね。
- 新澤
- そうですね。
- いわばクイズゲームだと思うのですが、なにかつくるきっかけはあったんでしょうか?
- 新澤
- えっと、いくつかありまして、もともとクイズが好きだったんですね。ガチ勢ではないんですけども、実は高校生クイズに出たこともあります。
- 高校生クイズに!
- 新澤
- 4日前くらいから対策をバリバリやって挑んだんですが、新潟予選の敗者復活戦で敗れました。あと1問で復活できたんですけど‥‥。
- うわぁ、ギリギリでだめだったんですね。
- 新澤
- まぁ、それくらいにはクイズが好きなんですよ。今も、本業はパズル制作会社で作問したりしています。で、日々問題に接していると、「クイズにならない問題」もたくさん出てくるんですよ。おもしろくないというか、なんでそんなこと聞くんだ、みたいな。日本の高い山の問題の答えは「富士山」で、次に高い「北岳」あたりはまだいいんですけど、3番目、4番目は、もう問題にならない。
- あー、たしかにクイズで聞かれることって、だいたい「いちばん」のものですよね。いちばん高い、いちばん低い、いちばん長い‥‥。
- 新澤
- そうそう、それ以外の部分がもったいないというか、まだ掘られていないので、うまく使えないかなと思っていました。クイズってみんなが答えられないといけないので、それ以外で問題をつくるなら、けっこう工夫が必要になるんですよね。
- たしかに、そのままクイズにしても成り立ちませんね。
- 新澤
- なんていうか、クイズにならない部分の問題意識のようなものを、常にもっていたんです。
- 新澤
- それから、私はクイズゲームもけっこう好きで、川崎晋さんがゲームデザインをされた「クイズいいセン行きまSHOW!」をよく遊んだりしていました。数字で答えるクイズで、ちょうどみんなが思ってる答えの真ん中の数字、つまり「いい線」を狙うのがたのしいんですよ。そういうふうに、広く遊ばれるようなゲームをつくりたいとも思っていました。
- みんなが等しく、たのしく遊べるゲームをつくりたい、と。
- 新澤
- そこで、都道府県のことなら答えられるんじゃないかと思いついて。そのとき思い出したのが、前にネットで流行った「都道府県を直訳する遊び」。『キャピタルホース』をつくっている時期からは、はるか昔に流行った遊びなんですけど。
- あぁ、静岡は「サイレントヒル」みたいな。
- 新澤
- そうそう、青森は「ブルーフォレスト」だとか。都道府県でのクイズ形式を思いついたときに、「あれ、おもしろかったなぁ」と思い出しまして。で、都道府県の直訳が、なんだか馬の名前っぽいなぁと思って、競馬に見立てるとちょうどいいんじゃないかと。
- あー、そういう流れだったんですね。私、逆だと思っていました。競馬がお好きで、そのシステムを利用するために、クイズ形式を考えられたのかと。
- 新澤
- いやー、競馬は『キャピタルホース』をつくる直前に、友だちとちょっとやったくらいです。‥‥それでいうと、ボードゲームのなかでも、レースゲームって王道としてあるんですよ。今だとボートレースだとか、自転車レースだとかがあるんですけど、自分でもレースゲームをつくってみたいという気持ちもありました。
- 競馬はまさに、ですね。
- 新澤
- はい。クイズって同じくらいの知識量の人たち同士じゃないとたのしめないんですけど、都道府県のランキングをレースにしたら、わりと公平にたのしめるんじゃないかと思いました。都道府県だと1位から47位まで使えますし。
- 『キャピタルホース』をやってみて実感しましたが、出身地だから有利ってわけではなくて、知らないことがたくさんありました。
- 新澤
- そうですよね。あ、あと、もうひとつ問題だと思っていたことがあって。
- どんなことでしょう。
- 新澤
- 多答型のクイズって、あるじゃないですか。「〇〇をつくっている都道府県ベストテンを当てましょう」みたいな。この形式って、ファインプレーをした人がわかりづらいと思っていたんです。
- 難しいところを当てた人がってことですね?
- 新澤
- そうです。協力型だったらあまり問題にならないかもしれないですけど、やっぱり、「そんなのわかんないよ」っていうところを、より正確に当てた人が点数を多くもらえるような仕組みにしたかったんです。
- 『キャピタルホース』では、ランキングの順位が得点になるので、当たりづらい下位であるほど得点はあがるし、賭け方によって得点を足したり、掛けたり、割ったりするので、より正確に当てた人が得点をゲットできるようになっていますね。
- 新澤
- 得点の配分は、実際の競馬っぽい数値になるようにしました。
- はぁー、すごい。おもしろいです。なにか大きなきっかけがあってできたわけではなく、新澤さんのなかにゲームづくりの「種」みたいなものがたくさんあって、それがうまくつながってできたのが、『キャピタルホース』なんですね。
- 新澤
- はい、いろいろうまくまとまりました。
- 『キャピタルホース』の原型ができてから、実際に形になるまでにはどのくらいかかったんでしょう?
- 新澤
- えーと、思いついてから次のゲームマーケット(2023年春)で販売したので、3か月くらいですね。
- おぉ、すぐですね。
- 新澤
- そうですね。中野にある「フローチャート」というボードゲームバーによく行っているんですが、そこに手書きのプロトタイプを持っていって、仲間内で試遊したりしてるんです。『キャピタルホース』もそこで何回か遊んでみて、「あ、これはいけるな」と思いました。
- かなりスムーズに形になったんですね。
- 新澤
- そうですね。種がまとまるまでけっこう時間がかかったんで、まとまってしまえば、わりとスムーズにいきました。
