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苦戦したランキング集め。
- 『キャピタルホース』は、プロトタイプができてから商品化までスムーズに進められたということでしたが、とはいえ、つくっていくなかで試行錯誤したことはあったんじゃないかと。
- 新澤
- そうですねー、クイズの形式やルールはだいたいできていたので、細かいところを詰める作業くらいでしょうか。回答はなにに書くのかとか、書いて消せるほうがいいのかとか。
- 結果、カード型のホワイトボードと、ホワイトボード用のペンが付属されましたね。
- 新澤
- このペン、仕入れるときに税関で止まっちゃったんですよ。
- ええっ?! 大事件じゃないですか!
- 新澤
- 国内の通販サイトで購入したんですけど、輸入品だったらしくて。で、このペンの商品名が「メイクアップペン」って名前だったんですね。
- メイクアップペン。
- 新澤
- 荷物の品名のところに「メイクアップペン」と書かれていて、それを見た国際便の人が化粧品だと思ったらしく、「化粧品はこんなに大量に輸入できませんよ」って電話がかかってきたんです。
- ちなみに、何本くらい購入されたんですか?
- 新澤
- たしか2000〜3000本でした。化粧品は20個とか、それくらいしか輸入できないから、とんでもない数を輸入しようとしてる、みたいな(笑)。化粧品なんて輸入した覚えはないし、なんのことだかわからずにいたら、「品名に『メイクアップペン』と書かれています」って、国際便の人が教えてくれて。それで、ホワイトボード用のペンのことだと合点がいき、「化粧品ではありません」と伝えて事なきを得ました。
- わー、国際便の方が品名をいってくれなかったらと考えると、ゾッとしますね‥‥。
- 新澤
- そうですね、「化粧品なんて輸入していません」で、荷物が届かずに終わっていたでしょうね(笑)。
- 新澤
- あと、レースを展開するときに都道府県を何個出すのがいいのかは、調整しましたね。
- 競馬でいうと、何頭立てにするかってことですね。
- 新澤
- そうです。あんまり多すぎると当てるのが無理になっちゃうし、当然ですが、頭数を絞るほど当たりやすくなる。
- 試作段階では、最大何頭立てでプレイされたんですか?
- 新澤
- たぶん、10頭くらいだったと思います。10頭でやると、すごく当てにくいときもあるんですけど、逆にめちゃくちゃ当てやすくなるときもあるんですよね。
- そうか、頭数が多いと、上位のほうの馬も出てきやすくなるから。
- 新澤
- そうそう、そうなんです。いろいろ試してみて、6頭立てがいちばんバランスがよさそうでした。
- いやでも、6頭でも全然当たりません(笑)。
- 新澤
- なかなか難しいですよね(笑)。
- そういう細かい詰めの部分はきっとたくさんありそうですね。そのうえで、『キャピタルホース』をつくっていて、いちばん苦労したところはどこですか?
- 新澤
- やっぱり、お題を決めるところですね。数字を集めるのは、ちょっと苦労しました。
- たしかに、都道府県のランキング集めは苦労しそうですね‥‥!
- 新澤
- お題としておもしろいかどうかというのもあるし、そもそも47位まで出ていないものもあるんですよ。がんばっていても、25位までで終わってるランキングとか。松葉杖の生産量のランキングとかおもしろかったんですけど、47位まで出てなかったですね。
- ああー、たしかにおもしろそうですが、沖縄とかでは松葉杖をつくってなさそうですもんね‥‥。これらのランキングはどうやって集めたんですか?
- 新澤
- 家計調査とか、政府が発表しているものをひたすらチェックしていました。その時期は、総務省のページばっかり見ていましたね。
- たくさんのランキングを見られたと思うのですが、なにか印象に残っているものってありますか?
- 新澤
- あー、なんでしょうね。個人的には、出身が新潟なので、ラーメンの消費額が山形県と1、2位を争っていたのがおもしろくて、お題に入れましたね。意外と知られていないだろうなぁと。食べもの系はけっこう意外なものが多かったのと、数字を集めやすかったのもあって、多めにお題に採用しています。
- 食べものは想像しやすいので、お題としていいですよね。ラーメンだと、ご当地ラーメンは各所にあるけど、だいたいここなんじゃないかなって想像がつく。
- 新澤
- なんとなくわかりますよね。当たってるかどうかは別なんだけど、考える指標はちゃんとある。
- すべての都道府県の順位がでていて、お題になりそうなランキング‥‥。集めるのに、かなり時間がかかりそうです。
- 新澤
- うーん、1〜2か月はかけたと思います。
- 発想から完成まで3か月ですから、制作期間の多くがランキング集めだったんですね。
- 新澤
- そうですね。クイズゲームって、ルールはもちろんですが、やっぱりお題のチョイスとか、細かいところがおもしろさに影響を与える部分も大きいので、そこに時間を充てました。あと、絶対に間違っちゃいけないっていう‥‥。
- ああ、数字はそうですね‥‥! きっと校正がたいへんでしたね。
- 新澤
- どこか間違えているかもしれませんが(笑)。
- でも数字って古くなるから、問題だけ2025年バージョンというのもつくれそうですよね。ラーメン消費額とか、大きくは変わっていないかもしれないけど。
- 新澤
- つくれます、つくれます。あと、戦国編とかもできます。時代が思いっ切り異なるお題を集めてもいいと思っています。
- あー、いいですね。土器の出土数とか。
- 新澤
- 石高ランキングとか。
- うわぁ、たのしそう。歴史に思いを馳せたいですね。
- 新澤
- あと、よく世界版をつくってほしいといわれるんですが、これがなかなか難しいんですよ。
- たしかに、世界版はお題の選定がかなり難しそうですね。
- 新澤
- 国の面積や人口などの地理系のクイズだとか、気温などの気候系のクイズはできるんですけど、食べものが意外といけなかったりするんですよね。
- 宗教的に食べられないものがあったりしますし。
- 新澤
- そうなんですよ。一応、アメリカの州の数が50州と都道府県に近いので、アメリカバージョンをつくろうと思って調べたんですが、家計調査的なものが見つけづらくて。
- アメリカって広いし、統計とるだけでもたいへんそうですもんね‥‥。自分が日本人だからなんですが、やっぱり、都道府県ってそれぞれに特徴があるし、なんとなくわかるじゃないですか。
- 新澤
- そうですね。
- でも、アメリカの州にも、そういう特徴があるのか、ちょっと想像がつかない‥‥。いや、アメリカのほうが広いし、あるんでしょうけど。
- 新澤
- そうなんですよ、私もそこのイメージがどのくらいあるのかがわからなくて。あと、州のなかでも、地域でイメージが変わるのかなと思ったり。例えば千葉でも、あそこの地域は野菜がとれる、とか、こっちは落花生で、そっちは梨だとか、あるじゃないですか。
- うわぁ、そうですね。都道府県と比べて、州のほうが大きいところが多いでしょうから、地域差も大きくなりそうですね。‥‥アメリカバージョンを出すとするならば、現地の方がつくってくれたほうがいいですね。
- 新澤
- 数字に強くて熱心な方がいれば、ぜひお願いしたい。つくってくれたらうれしいですね。
- そう思うと、日本ってすごいですね。ちゃんと都道府県別に確固たる特徴がある。
- 新澤
- そうですね、日本は長細いから、特徴が分かれているんですよね。
- 北は北海道、南は沖縄で、全然違いますもんね。そう思うと、次につくりやすいのはチリになる、のか?
- 新澤
- チリですね(笑)。全然関係ないですけど、このあいだ、チリの方がゲームマーケットに来てくれて、いろいろ買っていってくれました。
- そうなんですね! いつかチリバージョンができるといいですね(笑)。
- 新澤
- そうですね、いつか(笑)。
