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連載:どうして、このゲームをつくったんですか?
ドロッセルマイヤーズ 渡辺範明さん

漫画や小説のようにゲームをつくりたい

取材・文:大高(すごろくや)
公開日:2026年7月27日
漫画や小説のようにゲームをつくりたい

「どうして、このゲームをつくったんですか?」は、ボードゲーム作家の方々がどのように考え、形にしていったのかを聞くインタビューシリーズです。シリーズ第6弾では、ゲームデザイナー&プロデューサーの渡辺範明さんにお話を伺いました。ゲームプロデューサーという職業についてや、「ゆるゲーシリーズ」の誕生秘話など、盛りだくさんです。

PROFILE
渡辺範明
ドロッセルマイヤーズ
渡辺範明(わたなべ のりあき)
drosselmeyers.com/

株式会社スクウェア・エニックスのゲームプロデューサーを経て、現在、株式会社ドロッセルマイヤー商會 代表取締役。アナログゲームメーカー「ドロッセルマイヤーズ」として、ボードゲームやカードゲームを中心に様々なタイトルを手掛けるゲームデザイナー&プロデューサー。代表作に『Kaiju on the Earth』(アークライト/小学館/KADOKAWA)、『ヨフカシプロジェクト』(コナミ/ブシロードクリエイティブ)、『小学館グッドゲームズ』(小学館)、『ふたばくゲームズ』(双葉社)、『ゆるゲー』(自社発売)などのアナログゲームシリーズがある。玩具企画者、マンガ原作者、ラジオ/トークイベント/ポッドキャスト等での話し手としても活動中。

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ゲームプロデューサーという職

  1. 伺いたいことがたくさんあるのですが、まず、渡辺さんの肩書きについてお聞かせください。「ゲームデザイナー&プロデューサー」とされていますが、ボードゲームのプロデューサーをはっきり表明されている方って、あまりいらっしゃらないような‥‥?
渡辺
そうですね、プロデューサーが本職ですと言い切る人はほとんどいないと思います。ただ実際には、そういう役割の方は、各組織ごとにいらっしゃると思いますよ。すごろくやだと、代表の丸田康司さんがそういうポジションでしょうし、テンデイズゲームズのタナカマ(田中誠)さんもそうですよね。
  1. 渡辺さんは、ゲームデザインよりも、プロデュースが本職だと捉えていらっしゃるのでしょうか。
渡辺
そうですね。自己評価するなら、プロデューサーとしては常にプロとして仕事をする自信があるけど、ゲームデザイナーとしてはわりと得意/不得意があるって感じです。
  1. 例えば、あるボードゲームを思いついたときに、プロデューサーとしてほかのゲームデザイナーさんに頼むのか、自分がゲームデザインもするのかという判断はどのようにされているんですか?
渡辺
自分よりもうまくつくれそうな人が思い浮かんだら、その人に頼むようにしています。それと例えば、「Kaiju on the Earth」シリーズ(※)のゲームデザインは、ほかの方にお願いするようにしているんですが、そんなふうに、むしろゲームデザイナーありきで、この人にこういうゲームをつくってもらいたいと思って企画を考えることも多いです。「Kaiju on the Earth」シリーズは、日本の代表的ボードゲームデザイナーたちのショーケース的なブランドになるとおもしろいなと思ってやってます。

※「Kaiju on the Earth」シリーズ…怪獣映画の世界を、カードやコマを使ってプレイヤー自身が体験するボードゲームシリーズ

『ボルカルス ver.2.0』の一場面
『ボルカルス ver.2.0』の一場面
  1. たしかに、すでにそういう気配がありますね。
渡辺
なので、自分がゲームデザインをするのは、わざわざほかの人に頼むほどではない、軽いものになりがち(笑)。これは自虐でもなんでもなくて、実際に「もの」としてつくっていくときの開発段階で、詳細に内容を詰めていくときに、「このゲームが得意そうなデザイナーさん」を思い浮かべるんですよね。その人が過去に同じようなコンセプトのものをつくったことがあれば、すでに一度扱ったことのあるメカニクスを使いこなせますし、より発展的なものがつくれるからいいんですよ。で、そのオファーをするために要件定義(※)を整理していたら、その段階で「これ、ほぼできちゃっているな」ってことがある。シンプルなゲームほど、そういうことがありがちですね。

※要件定義…取り組みの目的や必要な機能・条件を整理し、実現すべき内容を明確にする工程。もともとはシステム開発やIT業界でよく使われるが、ビジネス上の課題整理や企画づくりでも使われる

  1. そのときは、渡辺さん自らがゲームデザインを担当される。
渡辺
だから、自分がゲームデザインをしたいと思って、つくりはじめるということはあまりないんです。自分も結果的にオファーするゲームデザイナーの内の一人というか。あまり複雑なゲームデザインは得意ではないけれど、いちばん身近にいて、コンセプトの理解度も高く、頼みやすい。雑に扱えるし、あまり文句もいわないので、助かってます(笑)。
  1. (笑)。そういったプロデューサー目線というのは、もともとコンピュータゲームのプロデューサーをされていたという、渡辺さんの経歴が大きく関係していると思うのですが、渡辺さんがボードゲームを意識したのは、いつごろなんでしょうか。
渡辺
ボードゲーム自体は、小さいころから遊んでいたんですよ。うちはけっこうしつけが厳しい家庭だったので、テレビゲーム禁止で、ファミコンとかも買ってもらえなかったんです。なので、バンダイが出していたガンダムのボードゲームとかで遊んでいました。ただ、当時はボードゲームを体系的に捉えて遊んでいたわけではなく、単に遊びの一つとしてやっていました。はっきり意識するようになったのは、高校生か大学生くらいのときですね。
  1. 高校か大学あたりに。
渡辺
前後関係が定かではないのですが、『ガイスター』『ディプロマシー』『人狼ゲーム』の3つを、だいたい同じタイミングで知ったんですよね‥‥。『ガイスター』は、たぶん『ファミコン通信』の編集者のコラムでおもしろいドイツのボードゲームとして紹介されていて、そんなのがあるんだと。
  1. 『ファミ通』で!
渡辺
そうなんですよ。『ファミ通』で読んだだけだと忘れちゃってたと思うんですけど、実際に地元のおもちゃ屋さんに置いてあったんですよね。地元は静岡なんですが、「百町森」という老舗の絵本と木のおもちゃを扱っているお店と、「おもちゃ天国赤春堂」という昔から海外のゲームを取り扱っていたお店があって、たぶんそのどっちかで『ガイスター』を見つけて。「これ、『ファミ通』で読んだアレじゃん!」と思って、購入した記憶があります。
  1. それが、ボードゲームへの興味の第一歩だったと。ほかの2つのゲームとの出合いは覚えてらっしゃいますか?
渡辺
人狼は『ウルティマオンライン』(※)のなかで流行っていたことで知ったのかなぁ? なので、90年代末あたりだと思います。たしか、『ディプロマシー』は人狼を知ったあとで、こういうほぼ会話だけで成立するようなゲームがほかにもないか調べていって、知ったような気がします。

※ウルティマオンライン…1997年にサービスを開始した、大規模オンラインRPGの草分けとして知られる作品。多くのプレイヤーが同じ世界で冒険や交流をたのしむ遊びを広く普及させた

  1. その3つのゲームが、渡辺さんにボードゲームを意識させたということですが、当時どのような印象をもたれたのでしょうか。
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渡辺
時系列はあいまいですが、そのときのインパクトは強烈に覚えていて。「こんなにシンプルな遊びなのに、こんなにもおもしろいんだ!」と思わされたんですよね。この3つのゲームとも、ルールがシンプルなのに対人戦ならではの奥行きがむちゃくちゃある。こんなふうに限られた仕組みだけで、何度でも遊びたくなるゲームこそ、最強なんじゃないかと感じました。実はゲームだけじゃなくすべての表現に関して、それは僕の好みとしてはっきりしていて、例えば演劇には小さな舞台と数人の出演者だけで物語を感じられるものも多いじゃないですか? 大舞台よりもそういうものが好きなんですよ。高校生くらいのころに、三谷幸喜さんが脚本を書いたドラマが、とても勢いがあって、例えば『王様のレストラン』とか、映るのはほぼ店内だけなんですけど、こんなにもおもしろくなるのかとびっくりしました。
  1. 三谷さんの作品では、会話や人の気持ちの動きなどで物語が繰り広げられていきますよね。
渡辺
そうそう、そういうのがいちばんいいと思うんです。だから、スケールの大きなハリウッド大作アクション映画とかは、今はそういうのもたのしめますけど、昔はあまり興味がなくて。出演者がいっぱい出てきたり、雄大な景色が広がったり、派手な爆発があったりとかじゃなくて、ミニマムな装置のなかで展開していく物語のほうがおもしろいと思っていました。今でも、その感覚はあまり変わらないですね。そういう意味で、僕はボードゲームのほうが向いているし、いってしまえば大作寄りのコンピュータゲームをつくるのには向いていない。
  1. なるほど。
渡辺
僕は新入社員として株式会社エニックス(現 株式会社スクウェア・エニックス)に入社したんですが、エニックスに入る人って、だいたい『ドラゴンクエスト』をつくりたいんですよ。スクウェアに入った人も『ファイナルファンタジー』をつくりたいわけで。
  1. そうだと思います。
渡辺
でも僕は、そういう大作シリーズは全然やりたくなくて(笑)。さっき話したような、ミニマムなのにおもしろいものをつくりたいと思っていたんですよね。まぁだから、今でいうとインディーゲームみたいなものが理想のゲームプロダクトではあるんですが、当時のコンピュータゲームの市場は、そういうものが非常に向いていない市場だったので‥‥。今でこそ、ゲームをダウンロード販売するのが主流になってきましたが、当時はすべてパッケージ販売だったので、標準価格がだいたい決まっていたんですよ。なので、同じ値段ならたくさん遊べるほうがいいという話になる。
  1. 1つのゲームで何百時間も遊べるもののほうがよい、という価値観になりますね。
渡辺
そう、だから大作がもてはやされました。でも今の感覚でいうと、当時よりも可処分時間の奪い合いになっているから、「1000円でゲーム買って、1日遊べて、すっきりクリアもしました」っていうものも、それはそれでよろこばれるわけで。
  1. そういう時代になりましたね。
渡辺
それに関連していえば、もうひとつ僕が興味があるのは、作品自体のクオリティとは別に、ビジネスの枠組みって、実はエンタメ作品の成功/失敗に、めちゃくちゃ影響が大きいじゃないですか。ビジネスの枠組みが変わったことによって、同じゲームでも、ある時代には全然受け入れられなかったのに現代では受け入れられるとか、前は全然儲からなかったのに、めちゃくちゃ儲かるようになったとか。逆もしかりですが。そういう環境要因みたいなところを考えるのも好きなんですよ。だから、プロデューサーをやっているともいえますね。

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