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連載:どうして、このゲームをつくったんですか?
ドロッセルマイヤーズ 渡辺範明さん

漫画や小説のようにゲームをつくりたい

取材・文:大高(すごろくや)
公開日:2026年7月27日
漫画や小説のようにゲームをつくりたい
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人について考えている

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『ドロッセルマイヤーさんのさんぽ神』をペラペラ‥‥。さんぽ神からの「おつげ」は、「5駅先で電車を降りて」「しょうもない写真を撮ろう」でした
『ドロッセルマイヤーさんのさんぽ神』をペラペラ‥‥。さんぽ神からの「おつげ」は、「5駅先で電車を降りて」「しょうもない写真を撮ろう」でした
  1. シリーズの代表作になった『ドロッセルマイヤーさんのさんぽ神』は、どのようにして生まれたのでしょうか?
渡辺
これをつくったきっかけは二つあって、一つは『ポケモンGO』なんですよ。
  1. あの、スマートフォン用のアプリゲームの?
渡辺
そうです。『ポケモンGO』の、街をそのままゲームに変えるというコンセプトに、僕はとても感銘を受けました。そして、このゲーム性をもっと進化させようと考えてみたときに、『ポケモンGO』で遊んでいる人は街でゲームをしているようだけど、実際は街のことはあまり見ていないなと思ったんです。「この公園には、このポケモンが出現する」といった情報だけしか見ていなくて、公園自体には目もくれない。みんなもっと街を見ようよと思ってつくったのが、『さんぽ神』なんです。
  1. 渡辺さんなりの『ポケモンGO』なんですね。
渡辺
そう、「ARゲームをアナログでつくろう」みたいな気持ちでした。で、もう一つのきっかけは、新型コロナウイルスです。コロナ禍では、みんなで集まってボードゲームをするのが憚られるような時期も長かったですよね。そんななか、新作のボードゲームはどんなものにしようかと悩んでいたときに、個々人が外に散歩に出る遊びなら問題ないだろうし、なんならむしろ健康的だし、『ポケモンGO』にならったアナログARをやるなら今かも、と。『さんぽ神』は当時から入稿データをまったく変えていないので、未だに「あそびかた」のところに「他人との接触を避けるならここからここまでのページを使ってください」と書かれたままになっています。
  1. もともと、渡辺さんは散歩をよくされていたんですか?
渡辺
はい、うちは夫婦とも散歩は好きなので、一緒に夜の散歩をしたりします。散歩のおもしろさって、こう、あえて口にするほどのものでもない小さな発見とか、すご〜く淡いものなんですよね。この木に花が咲いたなぁとか、そろそろ金木犀の季節だなぁとか。いつもは通らない道を歩いてみるだけで、別になにがあるというわけでもないけど新鮮な気持ちになれるとか。そういう、散歩の淡〜いおもしろさに、外部からいつもと違うミッションを加えるだけで、さらにおもしろくなると思ったんです。あと、『サンポー』というウェブマガジンがあって、そのサイトの編集部に「一緒にこういうのつくりませんか?」って持ち掛けたんですよ。
  1. (検索しながら)誰かの散歩マガジン『サンポー』ですね。
渡辺
こういう街歩き系のサイトって、お店を紹介したり、地元のグルメを紹介したりして、広告収入を得たりしているのがふつうだと思うのですが、『サンポー』はそういうことを全然していなくて。よさげな路地とか、気になった看板とか、そういったマネタイズできなそうなものばかりを紹介していたんです。このサイトをつくってる人なら『さんぽ神』の散歩観に共感してもらえるのでは?と思って、連絡をとりました。街でどんなことをしたらおもしろいか? というアイディアを一緒に考えてみたかったんです。
  1. 『サンポー』の方とは、ネタ出しから一緒にされたんですね。
渡辺
はい、スプレッドシートにお互い思いついたものをどんどん書いていくスタイルでやっていました。収録可能なページ数よりもだいぶ多くネタを出してから、その中からどれを採用するかを選抜して決めていきましたね。
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  1. その取捨選択は、どういう基準でされたんでしょう?
渡辺
どうだったっけなぁ? たしか、似たようなお題をひとつに統合したり、ちょっと危なそうなものや迷惑がかかりそうなものを除外していった気がします。「そこらへんにあるボタンを押してみよう」とか、行為としてはおもしろいんですけど、押したらダメなボタンもあるわけで。
  1. 非常ボタンとか。
渡辺
そうそう。「おばあちゃんと話そう」とかも超いいんですけど、人に迷惑をかけるかもしれないと思って、やめちゃったなぁ。
  1. 不審者だと思われてしまう可能性がありますね。
渡辺
そういう、なにかしらの問題が起こりそうな項目を省いていったら、ちょうど50個くらいになったような気がします。‥‥話していて思い出したのですが、そういえば、『さんぽ神』は最初『迷子王』って商品名にしようとしていたんですよ。
  1. 『マイゴオー』?
渡辺
迷子の王様で『迷子王』。誰よりも迷子をたのしむ、そんな迷子の王様を目指そう!というのがコンセプトだったんですが、こうやって目的を与えられて積極的に街を歩くのって迷子じゃないなと思って、「散歩の神」からお告げをもらう、という舞台設定にしました。『迷子王』というタイトルの語感は、すごく好きだったんですけど。
  1. たしかに、かわいらしいですね。『さんぽ神』の第二弾など、つくる予定はないんでしょうか?
渡辺
全然できますよね。あと『さんぽ神』って、実はけっこう住環境によるところがあって、「うちの田舎では遊べない!」といわれることも多いんですよ。「5駅先で電車を降りて」というお題でも、都会の5駅と田舎の5駅は全然違うから‥‥。そもそも、そこかしこに駅やバス停がある地域ばかりじゃないですしね。
  1. 地方で5駅も電車に乗ると、県を超えてしまうかもしれませんね。
渡辺
それで一度、田舎バージョンもつくってみようとしたんですが、田舎と一言でいっても、海だったり山だったり、暑かったり寒かったり、地方はすごく多様なものなので、統一的なお題をつくるのが難しくて。それで考えたのが、室内版の『ひまつぶ神』です。
  1. なるほど、家の中なら、だいたいみんな一緒ですもんね。
渡辺
『ひまつぶ神』は、いろいろ試すなかで上の句の「どこで」を無くして、下の句の「なにをする」だけにしました。はじめは「台所で」「リビングで」「玄関で」とか、「どこで」という場所の指定も入れていたんですが、無理な場所でやっても、別におもしろくないなぁと。
  1. 家のどこでやってもおもしろさは変わらない気がしますね。
渡辺
単にプレイヤーの負担を強いることになりそうなので、「どこで」をいれるのはやめました。よく誤解されるんですけど、『さんぽ神』も『ひまつぶ神』も、バラエティー番組のチャレンジ企画みたいなことをやらせたいわけじゃないんですよ。負担になるようなことを嫌々やらせてたのしむものではない。
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渡辺
『ひまつぶ神』は、今日は暇だから、とちょっとやってみたら、なんだか一日、少しだけ気分よく過ごせたな~みたいなものにしたかったので、変に負担がかかるようなお題はやめて、こういうキッカケが無いとなかなかしないんだけど、やってみたら意外とおもしろそうなお題を集めました。「1年以内にしたいことベストテンを考えよう」とか、「家の本から知り合いにあげる本を選ぼう」とか。
  1. あぁー、いいですね。 やったら絶対たのしいけど、いわれないとやらないと思います。『さんぽ神』や『ひまつぶ神』は、それが「おつげ」という形で受け取ることができるのもいいですよね。そう考えると、やっぱり「おつげ」の内容って、絶妙なバランス感覚が必要になりますね。
渡辺
そうなんですよ。やっぱりこれは、ゲームデザイナーならではの「遊ぶ人がおもしろいこと」の想像力が必要な作業だと思います。テレビのバラエティー番組の企画は「観る人がおもしろいこと」なんですよね。僕らはゲームをつくってきた経験から、遊ぶ人がどういうことをするとおもしろいと思うのかとか、ここまではやれるけどこの先の要求は負担になるだろうとか、こう誘導するとこういう結果が生まれるんじゃないかとか‥‥、そういうことを少しだけ解像度高くイメージできますよね。そういう意味で、「人」について考えている時間は多いですね。
  1. コンピュータゲームよりもボードゲームをつくるときのほうが、人について考えるものでしょうか?
渡辺
そうですね。やっぱりゆるゲーシリーズみたいにボードゲーム側が提供する要素が少ないゲームは、おもしろさの9割くらいをプレイヤーに頼っているので、そうすると、やっぱり人‥‥「人の心」について考えることが大事だと思います。あと、僕の場合は両親の影響もある気がしますね。
  1. ご両親ですか。
渡辺
うちは両親がどちらも精神科医なので。子どものころから人の心に興味があったことと、いまボードゲームをつくっていることは、実は関係が深いように思います。
  1. ご両親から、そういったお話しを聞いていたんですか?
渡辺
んー、まぁ日常の雑談レベルの話ですが、人間ってこういう環境だとこういうことをしがち、とか、こういうことに快不快を感じるものだよね、というような話を聞いたりしてたかな。
  1. へぇー!
渡辺
例えば、「1万円がもらえるうれしさよりも、すでにもっている1万円を奪われる嫌さのほうが感情としては強くなりがち」みたいなことって、人間の思考のクセのようなものですけど、これってゲームデザインにすごく関係するじゃないですか。僕は、ゲームデザインと心理学って表裏をなす技術だと思っています。
  1. たしかに、ゲームデザインって、ルールで人の感情をどう動かしていくか、ですもんね。
渡辺
といっても人の心なんて、それこそ十人十色で多様なものなので、そこがまた無限に考える余地があっておもしろいんですけどね。
  1. いや、興味深いお話をたくさん聞けてとてもたのしかったです。ありがとうございました。
渡辺
ありがとうございました!
【おまけ】5駅先で撮った、タイヤが柵からこんにちはしていただけの「しょうもない写真」
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